フジロック ’21を待ちながら

幻のフジロック 2020を経て、2021年の苗場まで。

【我が愛しのパリ】アカネ嬢との三年間 ②


『我が愛しのパリ〜バカ社長奮闘記〜後編』



これまでのあらすじ


2012年のフジロック

友人の1人がカフェ・ド・パリの踊り子『アカネ』に恋をした。

下戸にも関わらず、アカネ嬢に何と1万円ものチップを渡し、テキーラサーヴィスを受けた彼はそのまま撃沈。

その羽振りの良さから『バカ社長』の異名を授かる。

酩酊した意識の中、バカ社長は来年のフジロックでの再会を心に誓ったのであった。


                   _  



そして2013年。


バカ社長、苗場へ帰還。


「1年ぶりのパリだぁー!!」


彼の中で、もはや『苗場=フジ』では無く、

『苗場=パリ』となっていた。


快晴のグリーンステージには目もくれず、

一目散に奥地へ向かう。



たどり着いたパリ。

やはりここのモヒートはウマイ。


ポールダンスが始まる頃には、みんないい気分になっており、バカ社長を煽る


「シャチョサーン、シャッチョーサン!

 ゲーマン!ゲーマン!」


「ゲーセン、ノー! ツェーセン、ノー!

 ゲーマン!ゲーマン!」



1年ぶりのアカネ嬢が、ステージを終え客席を回りだした。

社長はすでに万札をなびかせている。


最初、バカ社長に気付かなかったアカネ嬢だったが、社長が一年分の思いを込めて、


「パッシィィィーンッ!!」


と、万札をアカネ嬢のケツに引っ付けると、


「キミかぁ〜!」



やはり万札は強い。


ファンとの再会が嬉しいのか、

上客を掴んだことが嬉しいのか、


アカネ嬢はニコニコしながらバカ社長にテキーラを注いだ。


「あっ、確かキミお酒飲めな……


時すでに遅し。


バカ社長は恍惚の表情でテーブルに倒れ込んだ。




これ全部、去年見たやつだ。




                   _  



さらに時が経ち2014年。


今年も『パリロック』がの時期がやってきた。


この頃になると、社長はアカネ嬢のブログ読者になっていた。


しかも何と!

そのブログによると、アカネ嬢はフジロック直前にポールダンス世界大会に出場し、


第3位!


世界3位になってたのだ!


マジですげー人だったんだな。


なので今回は事前に、『目録』に入れて一万円を渡してくれ!と社長に依頼していた。


「俺、今年もやんのぉ?」


そりゃそうだ。今年でアカネ嬢に3万円貢ぐことになる。


昔なら早割で通し券が買えた額だ。


電話越しの弱気な社長に一抹の不安を覚えつつ、今年も苗場に向かった。


現地で社長に合流すると、手にビニール袋を持っていた。


ビニール袋のキャパを超えた長方形の何かが、シルエットを露わにしている。


『目録』だ!


敢えてそれには触れず、私たちはパリへ向かった。


(中略)


そしてアカネ嬢が我々のテーブルへやって来た。


さすがに3年目となると向こうも覚えたらしく、バカ社長との再会を喜んだ。


社長がセカンドバック(ポシェット)から先程の袋を取り出すと、


「アカネさん、おめでとう」


と、目録を手渡した。


「えー!ありがとー!」


感激するアカネ嬢。



「え? ってかキミ、

 これ『御祝儀袋』じゃーん!」



なんと、バカ社長が渡したのは『祝結婚』と書かれた御祝儀袋だったのだ。


ホレた女に結婚の御祝儀袋を渡すとは、

これぞバカ社長の真骨頂である。



しかし、何だかんだみんな笑顔で、


カフェ・ド・パリはポジティブなバイブスで溢れた。


アカネ嬢はホントに喜んでくれたようで、

当時の自身のブログにもこのことをアップしている。


三年の歳月が結んだ2人の絆の証である。


せっかくなのでリンクを貼っておこう


https://ameblo.jp/kirakira119255/entry-11900904099.html


ちなみに、

その後の社長はというと、以下同文である。


                   _  


2015年。


3年に渡るパリとの関係は、


突如として幕引きした。



その年も我々はパリへ向かったのだが、


いつものパリと様子が違う。

何かがおかしい。


客が異様に多い。

しかも女性客が多い。


モテない男達の集う場末感がない。


そしてダンサー達が現れた時にそれは決定打となった。


アカネ嬢がいない!?


茫然とするバカ社長。


本当にここが、我々の愛したパリなのか。

まるで何もかもが変わってしまった。


人が多いため、吸えないタバコ。


立ち見の方に配慮した回転の早いテーブル。


何より埋めることの出来ないアカネ嬢の空いた穴。


その時、力の抜けた彼の掌から


諭吉がヒラリと落ちるのを


見たような気がした。



もはや我々の愛したパリはそこに無かった。



                   _  


あの夏からもうすぐ6年。


アカネ嬢は今、どこの国のどこの街で、

ポールをこすっているのか。


仲間内で知っている奴は誰もいない。


アカネ嬢との関係に終止符を打ったバカ社長はというと、


女に振られて浅草を飛び出すフーテンの寅さんのように、


この日本を飛び出した。


その後、フィリピンのマニラへ移住し、現地女性と結婚。


先月3人目の子供が産まれたらしい。


彼は遠い地で家族に囲まれ



今では幸せに暮らしている。


f:id:fujirock2021:20200624183223j:plain